概要
「旅館の求人」とは2003年7月2日にて死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?43へ投下された話。
元スレ
http://bubble.2ch.net/test/read.cgi/occult/1056554085/466-471
http://bubble.2ch.net/test/read.cgi/occult/1056554085/473-475
あらすじ
2年前
2年前の暑い日、読み手「神尾」が旅行費を稼ぐためバイトの求人を探していた(読み手はカップ麺しか食べていない)。
自室にて求人雑誌をめくっていたらどこも駄目で途方に暮れていた時、旅館のバイトを見た。
まかない料理をくれる、行きたかった場所と見て強く惹かれて電話する。
求人の電話
『…はい。ありがとうございます!○○旅館です』
電話に出たのは若そうな女性の声だった。求人広告を見て電話したと読み手が話す。女性は「少々お待ち下さい」と電話を後にする。
すると、低い男の声が小声で聞こえ「…………ザ…ザ…ザザ………い、……そう……だ…………」
神尾が正座して待ちそろそろ受話器を握っていいだろうと思い握った
『はい。お電話変わりました。えと…バイトですか?』
「はい。××求人でここのことを知りまして、是非お願いしたいのですが」
『あー…ありがとうございます。こちらこそお願いしたいです。いつからこれますか?』
「いつでも私は構いません」
『じゃ、明日からでもお願いします。すみません、お名前は?』
「神尾(仮名)です」
『神尾君ね。はやくいらっしゃい…』
電話に出たのはおじさんだった。バイトが決まった。
神尾は電話の要件を忘れないよう録音することにした。電話を再生し必要事項をメモした。
バイト先の写真を見ると白黒の宿で自然に囲まれていた。
何かがおかしい
バイト先が決まり鼻歌をしながらカップ麺を食べようとしたが、神尾の鼻歌がおかしくなったと感じる。日はいつの間にか暮れ、生温かい風が入ってくる。
神尾が窓ガラスに写った顔が「年をとったかのような生気のない自分の顔」になっていた。
次の日、神尾はひどい頭痛で目覚め、激しく嗚咽。歯を磨くと歯茎から血が出た。鏡を出たら目にクマが出て顔色は真っ白。
バイトをやめようかと思ったが、準備は整えているので辞めるのに気が乗らなかった。
その時、電話が鳴りバイト先からだった。
『おはようございます。○○旅館のものですが、神尾さんでしょうか?』
「はい。今準備して出るところです」
『わかりましたー。体調が悪いのですか?失礼ですが声が…』
「あ、すみません、寝起きなので」
『無理なさらずに。こちらについたら、まずは温泉などつかって頂いて構いませんよ。
初日はゆっくりとしててください。そこまで忙しくはありませんので』
「あ、だいじょうぶです。でも…ありがとうございます」
バイト先は心配そうなにたずねてくるが神尾は「だいじょうぶ」と答えた。
家を出るためドアを開けると眩暈がした。
駅へ乗るため切符を買うも雨が降り、激しい咳、ひび割れた肌となにかがおかしい。
何度も足を支えて階段を上がり休んだ。電車が来るまでの時間、ベンチへ倒れるように座った。
咳をすると足元に血が散らばった。
旅館へ行けばなんとかなると思っていたその時、老婆に取り押さえられた(老婆は非常に悲しそうな顔をしていた)。神尾が乗ろうとした電車は行ってしまった。
駅員たちが駆けつけ取り押さえられた。老婆は息を整えて言った。
「おぬしは引かれておる。危なかった」
老婆は去った。
回復する体、旅館への電話
駅員と2、3の応答をしたが、すぐ返され駅から出て家へ戻る。すると神尾の体がよくなり声も戻ってきた。
鏡を見ると血色がいい。
家に戻り荷物を下ろしタバコを吸う。
旅館の仕事を断ろうと電話した。すると
『この電話番号は現在使われておりません…』
もう1度しても返ってくるのは『この電話番号は現在使われておりません…』だった。神尾の家にかかってきた電話番号はたしかにこれだった。
録音した電話を聞くことにした。
再生された内容
再生された声は「若い女性ではなく低い声の男性だった」。
『ザ……ザザ…………はい。ありがとうございます。○○旅館です』
「あ、すみません。求人広告を見た者ですが、まだ募集してますでしょうか?」
『え、少々お待ち下さい。…………ザ…ザ…ザザ………い、……そう……だ…………』
神尾は「………い、……そう……だ…………」の音声を大きくして巻き戻した。
聞こえてきたのは「さむい……こごえそうだ」と子供の声が入っていた。さらに後ろに大勢の人間が唸っている声が聞こえる。
次に電話に出たのは「おじさんではなく老人の声だった」。
『あー…ありがとうございます。こちらこそお願いしたいです。いつからこれますか?』
「いつでも私は構いません」
『神尾くんね…はやくいらっしゃい』
今朝の電話記録を再生すると
『死ね死ね死ね死ね死ね』
「はい。今準備して出るところです」
『死ね死ね死ね死ね死ね』
「あ、すみません、寝起きなので」
『死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね』
「あ…だいじょうぶです。でも…ありがとうございます」
今朝と内容が違いすぎて電話の電源ごと引き抜いた。
求人の正体
神尾は求人雑誌を再度確認すると綺麗だったはずの旅館の1ページだけしわしわでシミが大きく広がり少し焦げていた。
古い紙質で数十年前の古雑誌のようなカンジダ。
そこには「全焼して燃え落ちた旅館が写っていた」。死者30数名、台所から出火、旅館の主人と思われる焼死体が台所で確認、料理の際に炎が出たと思われる、泊まりに来ていた宿泊客たちは逃げ遅れ炎にまかれて焼死」。
求人ではない。
神尾の頭が痺れて石のように動けなかった。ふいに雨脚が弱くなり一瞬の静寂が包んだ。
電話が鳴った。